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ゆいレール(沖縄都市モノレール)

ゆいレール(沖縄都市モノレール)_a0057057_09202329.png

「ゆいレール」は、沖縄県、那覇市、沖縄振興開発金融公庫及び民間企業の共同出資による第三セクター方式の沖縄都市モノレール株式会社が沖縄県那覇市で運営するモノレール路線「沖縄都市モノレール線」の愛称である。
「ゆい」は琉球方言の「ゆいまーる」(「雇い回り」を語源とする村落共同労働を意味する言葉)の「ゆい」から取られたもので、那覇空港駅と首里駅を結ぶ。
2018(平成30)年現在、「沖縄県内で現存している唯一の鉄道路線」で、全線が軌道法による軌道として建設されている。
2015(平成27)年現在、首里駅からてだこ浦西駅までの区間が事業中であり、2019(平成30)年春に開通する予定となっている。

概要:
沖縄本島の玄関口である那覇空港から赤嶺経由で漫湖を渡って旭橋に抜け、旭橋からは久茂地川沿いに那覇市の繁華街である久茂地・牧志地区を抜けて国際通りを跨ぎ、国道330号を北上して古島からは環状2号線を上り首里に至る全長約13kmの跨座式のモノレール線である。
この約13kmの区間をワンマン運転の2両編成の車両が約30分かけて走る。
沖縄県の交通手段は自家用車・タクシー・バスが中心であり、特に那覇都市圏では渋滞が悪化している。そこで、国、沖縄県、那覇市と沖縄都市モノレール株式会社が一体となって建設を行い、沖縄では戦後初の鉄道開通となった。
当初の世論では、前記の「クルマ社会」という見方から、利用されるかどうかの懸念があったが、いざ開業してみると、渋滞に巻き込まれないために時間が正確であることと、高所を走るという特性のために眺望がよく、モノレール自体が観光施設となったため、この懸念は杞憂に終わった。
眺望のために人気を集めるという点は東京モノレール羽田空港線と同様である。
切符の購入や自動改札機の通り方に慣れない利用客向けに、沖縄都市モノレールのホームページでは「利用ガイド」として乗車方法を詳説している。
開業翌年の2004(平成16)年に「沖縄都市モノレールの整備と総合的戦略的な都市整備計画」が日本都市計画学会の最高賞である石川賞を受賞した。
受賞対象者は、沖縄県、那覇市及び沖縄県都市モノレール建設促進協議会である。
全線で列車運行管理システムを導入している。古島駅から約57‰の上り坂が続く。最急勾配は儀保駅 - 首里駅間の60‰である。

路線データ:
ゆいレール(沖縄都市モノレール)_a0057057_10183811.png路線距離(営業キロ):12.9km
方式:跨座式モノレール(日本跨座式)
駅数:15駅(起終点駅含む)
複線区間:全線
電気方式:直流1500V
閉塞方式:車内信号式 (ATC)
車両基地所在駅:那覇空港駅(那覇空港駅 - 赤嶺駅間)(写真)
運行形態:
2017(平成29)年8月1日のダイヤ改正で、ダイヤがそれまでの平日ダイヤ・土曜休日ダイヤの2種類から、平日(月-木曜)ダイヤ・金曜ダイヤ・土曜ダイヤ・休日ダイヤの4種類に再編された。全列車が全区間運転の各駅停車であり、一部区間のみを運行する列車や、途中駅を通過する列車はない。
6時頃から運行され、終電は那覇空港駅発・首里駅発ともに23時30分となっている。
平日(月-木曜)は早朝が12-15分間隔、朝夕ラッシュ時が5-6分間隔、日中と夜が10分間隔、夜21時以降が12分間隔、金曜日は日中が8分間隔、土曜日は早朝と夜21時以降が12分間隔、それ以外は8分間隔、休日は早朝と夜21時以降が12分間隔、朝が8分間隔、夕方が9分間隔、それ以外は10分間隔となっている。
ワンマン運転を実施している。
全列車が全区間を運行するため折り返しは両端の駅のみで行われるが、牧志駅 - 安里駅間に非常用の渡り線があり両駅での折り返し運転も可能となっている。
事故などの突発的事象により運行に支障が出た場合は全線で運行停止になるが、例えば2007(平成19)年10月21日に儀保駅付近で行われた不発弾処理時に朝8時頃から処理完了まで那覇空港駅 - 牧志駅間で実施されるなど、予め運行計画が立てられる経路上の運行障害に関しては折り返し設備を利用しての区間運転が実施される。
ゆいレール(沖縄都市モノレール)_a0057057_17285710.pngなお車両基地が那覇空港駅側に設置されていることから、車両数の調整が困難である首里駅 - 牧志駅間のみでの運行は行われていない。
車両のうち旅客車は、開業時から使用されている「1000形電車」(写真)のみで、車両番号は首里側が1200台、那覇空港空港側が1100台の附番で、下2桁が編成番号を表し(すなわち、写真は第1編成)、2018(平成30)年5月現在、18編成36両が在籍、浦西延伸の際には1編成増備される予定である。
他に作業用車両として、MB-1、2 2両が在籍する。(上、車両基地写真 MB-1)

歴史:
沖縄本島では、大正時代に軽便鉄道や路面電車、馬車鉄道といった数々の鉄道路線が開業したが、昭和初期に入ると沖縄電氣の路面電車と糸満馬車軌道がバスとの競争に敗れて廃止され、残った沖縄懸営鐵道と沖縄軌道も太平洋戦争末期に運行を停止し、鉄道の施設は空襲や地上戦によって破壊された。そして、アメリカ合衆国による統治下に置かれた戦後は道路整備が優先されたため、鉄道は復旧されることなくそのまま消滅した。しかし、1970年代に入って経済活動が活発になってくると、那覇市を含む沖縄本島中南部地域に人口や産業が集中した。この結果、道路交通の渋滞が慢性化し、その対策として新たな軌道系公共交通機関を求める声が高まっていった。
沖縄が本土復帰を果たした1972(昭和47)年、日本国政府(以下、国)は沖縄の振興開発を推進するために「新全国総合開発計画」(新全総)の一部を改正し、沖縄県に対する特別措置として沖縄振興開発計画を策定した。これを受けて、国や沖縄開発庁、沖縄県、那覇市などが中心となって導入機種やルートなど具体的な検討を行い、最終的には「都市モノレールの整備の促進に関する法律」(都市モノレール法、昭和47年11月17日法律第129号)に基づき跨座式モノレールを導入することで決着した。
1975(昭和50)年、国・沖縄県・那覇市で構成される「都市モノレール調査協議会」を設置、ルート等の検討を行うなど建設に向けての準備協議会が発足。沖縄県と那覇市による「都市軌道建設準備室」が設置され、1980(昭和55)年に「都市モノレール関連街路に関する基本協定書」を締結、実施調査については、国庫補助事業(昭和56年度)として採択、推進された。
ルートは那覇空港から首里城に近い汀良(てら)地区までの区間を第一期区間とし、汀良地区から西原入口までの区間を第二期区間、さらに沖縄市方面への延伸も検討課題とした。
1982(昭和57)年9月に運営主体となる第三セクター「沖縄都市モノレール株式会社」を設立、同年に赤嶺 - 首里汀良町間を県に特許申請、翌年に再検討、那覇空港 - 首里汀良町間(営業距離12.9km)に延長された。
沖縄県と那覇市は都市モノレールの導入空間となる街路の整備事業を先行して進めた。1984(昭和59)年11月に宮脇俊三が沖縄を訪れた時点では、地元でも「いつ開通するかわからない。マイカー体制が定着した那覇で、果たして採算が取れるかどうか危ぶまれている」という声があった。
川島令三も、開業前は閑古鳥が鳴いて赤字になるに決まっていると散々言われていた、と自著で記している。
1994(平成6)年に沖縄県・那覇市と既存交通機関のバス会社との間で基本協定や覚書が締結され、1995(平成7)年の政府予算案(平成8年度)にモノレール関連のインフラ予算が盛り込まれる。
こうした着工に向けた動きの活発化により、同年12月に空港(現在の那覇空港) - 汀良(現在の首里)間の特許申請書を沖縄都市モノレールが再提出、翌年1996(平成8)年3月に同社は軌道事業の特許を取得したことから、同年11月に軌道本体の工事が着手された。
この時点での開業予定時期は2003(平成15)年12月としていたが、街路の先行整備で工期に余裕ができたこともあり、実際には4か月ほど早い同年8月に開業している。
太平洋戦争の激戦地であったことから建設前に不発弾探査が行われ、3か所において計7発の不発弾が発見され処理されたが、開業後も何度か運転を休止して不発弾処理が行われている。

年表:
(開業前)
1996(平成8)年3月1日 - 軌道事業の特許につき、運輸審議会件名表に登載される。
 4月11日 - 運輸審議会が、軌道事業を特許することは妥当である旨を答申 
 10月31日 - 都市計画事業の認可を受ける。
 11月25日 - 沖縄都市モノレール建設事業の起工式
1999(平成11)年11月30日 - 駅名・シンボルマークを決定し、愛称を「ゆいレール」とする。
2001(平成13)年12月4日 - 那覇空港 - 小禄間で試運転を開始する。
2002(平成14)年11月25日 - 全線での試運転を開始する。

(開業後)
ゆいレール(沖縄都市モノレール)_a0057057_22195646.png2003(平成15)年8月10日 - 那覇空港 - 首里間 (12.9km) が開業。昼間12分間隔。1日上下202本運転。開業時より乗車カード「ゆいカード」を導入(写真:以下のとおり、現在は使用不可)
2004(平成16)年12月26日 - 開業後初のダイヤ改正。運転間隔を昼間10分間隔とし26本増発
2005(平成17)年12月23日 - 開業以来平日・休日共通だったダイヤが変更され、休日ダイヤを新設。ここでいう休日とは、土曜日、日曜日、祝日、振替休日、年末年始(12月31日 - 1月3日)である。
2009(平成219年9月13日 - 不発弾処理のため全線運休(全線運休は台風などの自然災害によるもの以外としては開業後初めて)。正午すぎに運転を再開
2012(平成249年1月25日 - 首里 - 浦西(仮称)間の軌道事業特許を認可。翌26日交付
2013(平成25)年4月4日 - 首里 - 浦西間第1次工事施行認可
 11月2日 - 首里 - 浦西間延伸事業の起工式が浦添市で開かれる。
2014(平成26)年5月30日 - 2013(平成25)年度の事業報告が発表され、1日平均の乗客数(降客数含まず)が初めて4万人を超え、年間では1490万3196人となり、過去最高となった。
 9月8日 - ゆいカードの券売機での発売を終了
 10月2日 - 2011(平成13)年9月から運行されていた車体に首里城を描いた「首里城号」が運行終了
ゆいレール(沖縄都市モノレール)_a0057057_22073761.png 10月14日 - ゆいカードの窓口での発売を終了 
 10月20日 - IC乗車券「OKICA(オキカ)」(写真)導入
 10月29日 - ゆいカードの取扱を終了
 12月26日 - 延伸区間の駅名決定
2015(平成27)年11月6日 - 2015(平成27)年10月の乗客数が146万8449人、一日平均4万7369人で、いずれも単月の過去最高を記録したと発表された。
ゆいレール(沖縄都市モノレール)_a0057057_22363875.png





2016(平成28)年2月18日 - 延長区間のコンクリート製のレールが完成し、設置に向けて「安全祈願祭」と「出発式」が開催された。
 4月27日 - 液晶ディスプレイパネルを搭載した新型車両(左写真:1214+1114 編成)が営業運転を開始
2017(平成29)年5月26日 - 2016(平成28)年度決算が発表され、純損益は2億2053万円で2003(平成15)年の開業以来初の単年度黒字となった。
 8月1日 - この日のダイヤ改正で、ダイヤを平日ダイヤ・土曜休日ダイヤの2パターンから、平日(月-木曜)ダイヤ・金曜ダイヤ・土曜ダイヤ・休日ダイヤの4パターンに変更
2019(平成31)年春 - 首里 - てだこ浦西間 (4.1km) が開業予定

延長計画と延伸構想:
ゆいレール(沖縄都市モノレール)_a0057057_16065732.png首里駅から石嶺地区を経由した沖縄自動車道インターチェンジまでの延長計画、および沖縄道より先の地域までの延伸計画が検討されており、建設当初より首里駅から先の車止めは石嶺地区に向かってカーブした形で行き止まりとなっている。(写真)
また、同駅のホームは相対式となっており、上り線を利用して暫定的に片面のみ使用しているほか、延伸予定道路は軌道敷設対応の拡張工事が行われている。
内閣府は2005(平成17)年に延伸についての調査を行ったが、ゆいレールの利用実績は順調であるものの赤字を出しており、この解消が課題とされた。

延長計画:
数年にわたり延長計画の選定の協議会が行われてきたが、2008(平成20)年3月に首里石嶺町、浦添市前田を経由して、西原入口交差点に接続される総延長4.1kmの浦添案が選定され、2020年度までの開業を目指して計画が進められることとなった。2009(平成21)年度より延伸に向けての調査が開始されており、2、3年の調査の結果をもとに国に対してモノレール建設事業の予算要求を行う予定となっている。ただ、建設費用での問題が一部未解決となっている。
建設費用は396億円と概算されており、駅舎や軌道けた、柱などのインフラ部の整備費用については、原則として県道は県、市道は各市の道路管理者が負担することになっていた。
しかし那覇市側は、第1駅(那覇市に設置予定)の駅勢内(半径約800m)で那覇市民の利用はカバーできるとして、第1駅と第2駅(浦添市に設置予定)間の間にある那覇市道800mの整備費用は県や浦添市が負担するように求めた。
その後の協議会において、市道800mに関しては那覇市と県が整備を行うことにし、総事業費396億円のうち、県が57億円、那覇市が30億円、浦添市が46億円の費用を分担し、残りの263億円は国庫補助を見込むという試算が出された。
但し、費用分担に関して県や市は財政上の問題から出来る限り費用を抑えたいという意向があるため、分担割合の合意には流動的な部分が残されている。

(延長計画選定の推移については省略)

乗車券
ゆいレール(沖縄都市モノレール)_a0057057_22205828.png2014(平成26)年10月に更新された自動改札機は乗車券の投入口・搬送機構・取出口がなく読取部のみのタイプで、普通乗車券および1日・2日乗車券にはQRコードが印刷されており、これを読み取らせることで改札を通過する。(写真の様に再利用防止のためQRコードはマスク印刷される)。
改札を出場しても乗車券は自動的に回収されないため、改札機の先端に回収箱を設置している。

ゆいレール(沖縄都市モノレール)_a0057057_22342530.pngフリー乗車券1日乗車券・2日乗車券
沖縄都市モノレール線全線で有効。それぞれ大人用と小児用があり、小児用は大人用の半額である。自動券売機または駅窓口での発券時刻を基準として、1日乗車券は24時間、2日乗車券は48時間有効である。有効期限が時間制になっているのが特徴で、購入日の翌日(2日乗車券は2日後)になっても、前日(前々日)の購入した時刻までは有効である。
一部の観光施設(首里城、沖縄県立博物館・美術館 等)、飲食店では提示により割引がある。(公式ウェブサイト参照)
当初は有効期間は他の鉄道・バス事業者の一般的な1日乗車券と同様、購入日を基準としてその日(2日乗車券は翌日)の終電まで有効であったが、2011(平成23)年2月1日に改定され時間制となった。
改定当初は有効時間は最初に自動改札機で改札処理をした時刻を基準としていたが、OKICA導入と乗車券のQR券化により、自動券売機で発券した時刻を基準とするようになった。
2012(平成24)年10月31日までは、3日乗車券も発売されていた。有効期限が時間制になった際に72時間有効となったが、時間制としたことで、2泊3日で沖縄に滞在する観光客の多くが2日乗車券を利用するようになり利用が減少したため発売を終了した。(写真は「1日乗車券」)
筆者注:入場時刻(すなわち、改札機の入口側から入るの)が有効時間内であれば、有効時間過ぎても最初の降車(出場)駅まで「有効」だった。

ぐるっと那覇バスモノパス
沖縄都市モノレール線全線と、那覇バスの那覇市内線全線、市外線の指定区間(主に那覇市内の区間)で有効。スクラッチ式で、削った日付の日のみ有効。

がんじゅう1日乗車券
70歳以上の那覇市民を対象に発売。土日祝日と慰霊の日のみ利用可で、発売当日のみ有効。

乗車カード・定期乗車券
IC乗車カードの「OKICA」が導入されている。定期券は通勤/通学の別、1箇月/3箇月/6箇月の別で、いずれもOKICAで発行される。

参考資料:Wikipedia「沖縄都市モノレール」(最終更新 2018年5月4日)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%96%E7%B8%84%E9%83%BD%E5%B8%82%E3%83%A2%E3%83%8E%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%AB%E7%B7%9A
Wikipedia「沖縄都市モノレール線」(最終更新 2018年5月6日)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%96%E7%B8%84%E9%83%BD%E5%B8%82%E3%83%A2%E3%83%8E%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%AB%E7%B7%9A
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現地取材:2017.5.16ー17
記事投稿:2018.5.-7
  調整:2018.5.-8

by fbox12 | 2018-05-08 21:34 | 鉄道・バス