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fbox12 blog (博物館fbox12 館長の資料収蔵庫)

音響カプラ

私的文化遺産:整理番号37
音響カプラ_a0057057_20144239.png音響(おんきょう)カプラとは電話機の受話器へスピーカーとマイクロフォンを用いて音響結合し、データ通信を行う通信機器である。通信端末が自由化されていない国々や内線電話の特殊な回線インターフェースなどでモデムを電話回線に直接接続できない場合に一旦音声に変換することによって、公衆交換電話網を利用してコンピュータ間の通信を可能にするものである。

初期の製品は変復調部を内蔵し、通信用インターフェース(RS-232Cなど)を備えている。現在の製品は音響と電気信号の変換だけの機能となり、モデムを接続して使用する。

音響カプラ_a0057057_20224923.pngモデムとの間は専用コードで接続し、電話機の受話器を音響カプラ本体にはめ込む(大型のカプラ・・写真のものは、モバイルカプラで、右側写真の様に受話器とマジックテープで接続する)。発信操作は、接続した電話機のダイヤルを手動で回す方法で利用する。トーン(プッシュ)回線の場合はモデムからダイヤルできる。この構造のため周りの振動や騒音に弱く、安定度も低い。初期の通信速度は300bps程度で、平成元(1989)年頃には1200bps〜2400bps、平成17(2005)年頃には28.8Kbpsの製品が市販されていた。現在も、通信網が十分整備されていない国や地域においては重宝されている通信手段でもある。

日本での歴史:
1980年代前半、公衆交換電話網へのモデムの接続には制度的な制約が多く、加入者線を利用したデータ通信にはNCU(Network Control Unit)と呼ばれる網制御装置か音響カプラが利用されていた。
昭和60(1985)年に技術認定を受けた端末設備が自由に一般加入者線に接続できるようになり安定してデータ通信のできるNCUを内蔵したモデムが一般に使用されるようになったため、平成元(1989)年頃にはあまり使用されなくなった。以降はハンドヘルドコンピュータ等から、営業マンが出先の公衆電話を利用しての営業データを送信する等の用途に使われることが多かった。
その後、モジュラージャックでモデムが直結できるISDN対応公衆電話の整備、PHS・携帯電話・無線アクセスによるインターネット接続対応、ホテルなどのインターネット対応、公衆無線LANなどデータ通信環境が整備され、一般には殆どその役目を終えた。しかし、「アナログ一般電話や公衆電話はあるがモジュラージャックは存在せず、一般の無線アクセス環境が全てサービスエリア圏外」のような状況下では衛星電話やホテル等設備での固定通信利用、または音響カプラの他には外出時のデータ通信手段は存在しないという事になる。

*上記の受話器はめ込み型のカプラは、NTTの一般的電話機の受話器の大きさに固定されているため、小さめの受話器では、周囲の騒音などに対してはさらに不利となる。写真のモバイルカプラは、送話器に密着する部分が上下にスライドするため、比較的隙間なく接続ができる。

(以上、記事内容 wikipedia:平成26(2014)年9月14日更新からに一部追加)
by fbox12 | 2015-07-20 20:15 | 私的文化遺産