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fbox12 blog (博物館fbox12 館長の資料収蔵庫)

メルシャン 軽井沢 貯蔵15年

メルシャン 軽井沢 貯蔵15年_a0057057_2125454.pngミニチュアボトルコレクション 610

酒類:(酒税法上)蒸留酒類(ウイスキー)
酒類通称:シングルモルト・ウイスキー
原材料:大麦
度数:40%
容量:100ml
製造所:メルシャン株式会社(本社所在地:東京都中央区京橋1-5-8・・ボトルに表示のもの)

「軽井沢 貯蔵15年」は軽井沢蒸溜所モルトを主体に15年以上熟成したモルトだけをヴァッティングした100%ピュアモルトウイスキー。

避暑地として有名な軽井沢に昭和31(1956)年2月に大黒葡萄酒株式会社軽井沢蒸溜工場として創業した。それがのちの伝説的蒸溜所である"メルシャン軽井沢蒸溜所"である。当時の大黒葡萄酒株式会社はその当時国産大麦しか使用できなかった麦芽原料も昭和33(1958)年に輸入規制が緩和されたのを契機に、本場スコットランドから輸入されるようになり、大麦の優良品種「ゴールデンプロミス種」を使用した麦芽を浅間山麓の湧水で木桶樽で醸造し、木造の貯蔵庫でシェリー樽を用いて熟成させていました。スコットランドの伝統に学び、軽井沢蒸溜所独自のこだわりにこだわった職人製法の追及に試行錯誤した結果、ついに昭和51(1976)年に国内初の100%モルトウイスキーである「軽井沢」を誕生させた。軽井沢の白樺の森が創り出す適度な湿度を帯びた冷涼な空気と、夏の日の急激な温度変化から原酒を守ってくれる蔦は木造の貯蔵庫を覆いつくして、その姿はまるで天使の分け前のお礼にと大自然が力を貸してくれているかのようだった。

しかしそんな軽井沢蒸溜所もバブル崩壊や不良債権問題、アジア通貨危機、大手金融機関の連鎖破綻、円高不況、米国同時多発テロによるITバブル崩壊など様々な不況の煽りを受ける形で、平成12(2000)年以降は操業を一時停止した。当時本坊酒造の信州ファクトリー(のちのマルス蒸留所)も不況の煽りで平成4(1992)年の蒸溜を最後に休止していまった。しかし信州ファクトリーは平成23(2011)年に信州マルス蒸留所と名称を変更し蒸溜を再開したが、軽井沢蒸溜所は、メルシャンを買収したキリンによって同年11月6日をもって完全閉鎖することに至った。当時メルシャンを買収したキリンはすでに富士山麓御殿場蒸溜所を稼働させ国産ウイスキーの製造を行っていたため「富士山麓の御殿場蒸溜所、浅間山麓の軽井沢蒸溜所の2つもいらない。」と、判断したかどうかは定かではないが、軽井沢蒸溜所の閉鎖を決めることになった。軽井沢蒸溜所の蒸溜ライセンスも返上されてしまった今、もう二度と軽井沢蒸溜所が稼働することはないだろう。今ある軽井沢を冠したウイスキーが飲みつくされれば、もう二度と軽井沢蒸溜所のウイスキーを飲むことは出来なくなってしまったのである。

この「軽井沢 貯蔵15年」も現在世にどれほどあるのかは定かではないが、少なくとも今ある分でもう最後。二度と飲めなくなってしまう軽井沢のウイスキーである事は確かである。酒齢15年から31年のモルト原酒をヴァッティングした「軽井沢 貯蔵15年」の、ルビーを思わせるような色合いの中に深くやわらかな味わいを感じながら、軽井沢を愛し、軽井沢を誇り、軽井沢で粉骨砕身国産ウイスキーを守り続けた醸造人たちの想いに敬意をはらい乾杯したい。


(以上、記事内容 「下戸ますたーの忘備録」から)
by fbox12 | 2015-06-17 21:21 | コレクション